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掛け軸の種類一覧|表装形式と画題による分類
掛軸の種類とは、表装形式・画題・用途・形状という4つの切り口による分類のことです。掛軸は、表装の形式(真・行・草)と画題、そして用途と形状という複数の切り口で分類されます。それぞれの見分け方と、どの分類が価値と結びつくのかを整理します。

掛け軸の種類一覧(分類の全体像)
このページの要点
- 掛軸の種類は、表装形式・画題・用途・形状と寸法という4つの切り口で分類します。
- 表装形式:真は三段〜四段で金襴を多用し仏画向き、行は天地・中廻し・一文字の三段で日本画向き、草は一文字を省き茶掛や書に用います。
- 寸法:尺五立は幅約54〜55cm・総丈約190cm、尺三立は幅約44〜45cm・総丈約180cm、茶掛の細巾は幅約30cm前後です。
- 形状:縦長の竪物、横長の横物、2本一組の双幅、3本一組の三幅対があります。
- 価値との関係:価値と直接結びつくのは画題や形状ではなく、作者と表装の格、そして状態です。
掛軸の「種類」という言葉は、文脈によって指すものが変わります。整理すると、次の4つの切り口があります。
| 分類軸 | 主な区分 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 表装形式 | 真・行・草/大和表装・文人表装・仏表装 | 裂の段数と配置 |
| 画題 | 山水・花鳥・美人・仏画・禅語の書ほか | 本紙に描かれた内容 |
| 用途 | 茶掛・仏事・節句・年中行事・慶弔 | 画題と表装の組み合わせ |
| 形状・寸法 | 竪物・横物・双幅・三幅対/尺五立・尺三立など | 丈と幅、本数 |
買取の場面で価格に最も影響するのは画題と作者ですが、表装の格と保存状態も評価に加わります。以下、それぞれの分類を順に見ていきます。
表装形式による分類(真・行・草)
表装には、書道の書体と同じく真・行・草という3段階の格式があります。裂を何段重ねるか、どの位置にどの格の裂を配するかで決まります。
真(しん)の表装
最も格が高い形式です。総縁(そうべり)とも呼ばれ、金襴など格の高い裂を三段から四段に重ねます。仏画、曼荼羅、御本尊などに用いられ、格式ばった場に掛けられます。一文字にも風帯にも同じ金襴を使うのが典型です。
行(ぎょう)の表装
最も普及している形式で、大和表装とも呼ばれます。天地・中廻し・一文字の三段構成で、一文字に金襴、中廻しに緞子、天地に無地系の裂を配します。日本画、花鳥、山水など幅広い画題に用いられます。家庭にある掛軸の多くはこの形式です。
草(そう)の表装
簡素な形式です。裂の段数が少なく、一文字を省いたり、天地と中廻しを同じ裂で通したりします。輪補(りんぽ)表装や文人表装がこれにあたり、南画、書、茶掛に使われます。簡素であることが格の低さを意味するわけではなく、茶席ではむしろ簡素な草の表装が好まれます。
見分けるときは、上から下へ裂の切り替わり回数を数えてください。段数が多く金糸が多いほど真に近く、切り替わりが少なく無地に近いほど草に近いと考えると、おおよその判断ができます。
真・行・草の表装はどう見分けますか?
裂の数と格式で見分けます。金襴を多用し中廻しと一文字を分ける仕立てが真、簡素な二段構成が草にあたります。
大和表装・文人表装・仏表装の違い
形式名として呼ばれる3つを、実物で区別できるようにまとめます。
| 様式 | 構成 | 裂の傾向 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 大和表装 | 天地・中廻し・一文字の三段、垂風帯あり | 一文字に金襴、中廻しに緞子 | 日本画全般、花鳥、山水、美人画 |
| 文人表装(明朝仕立) | 一文字を省く、または全体を同一裂で通す | 無地紬、更紗、渋い色調 | 南画、文人画、書、茶掛 |
| 仏表装 | 三段〜四段、押風帯が多い | 金襴を多用、朱や紺の強い色 | 仏画、曼荼羅、御本尊、涅槃図 |
仏表装は風帯が垂れずに天地へ縫い付けられている(押風帯)ことが多く、これが判別の目印になります。また金襴の使用量が多く、遠目にも華やかです。
文人表装は逆に、色数が少なく落ち着いた印象になります。茶席では余計な華やかさが本紙の言葉を邪魔しないよう、この形式が選ばれます。仏画をお持ちの場合は仏画・曼荼羅掛軸買取、茶掛は茶掛・禅語掛軸買取もご覧ください。
よくある誤解:表装が豪華な軸ほど中身も良い
表装の格は本紙の用途に合わせて選ばれるもので、金襴を多用した真の表装は仏画や曼荼羅の様式です。茶掛は簡素な草の表装が本式であり、裂の華やかさと本紙の評価は別に見ます。
画題による分類(山水・花鳥・美人・仏画ほか)
画題は掛軸の内容そのものであり、需要と価格に最も直結する分類です。
- 山水画
- 山と水を主題とする風景画。中国由来の南画・文人画系と、日本の写生的な系統に分かれます。→山水画掛軸買取
- 花鳥画
- 花と鳥を組み合わせた画題。鶴、孔雀、四季花鳥、鯉などが定番です。→花鳥画掛軸買取
- 美人画
- 女性を主題とする画題。肉筆浮世絵から近代日本画まで幅があります。→美人画掛軸買取
- 仏画
- 仏、菩薩、曼荼羅、涅槃図など。宗教的な礼拝対象でもあります。→仏画・曼荼羅掛軸買取
- 水墨画
- 墨の濃淡だけで描く画題。禅宗とともに発達しました。→水墨画掛軸買取
- 書・墨蹟
- 文字を主体とする作品。高僧の墨蹟、一行書、大字などがあります。→書・書道作品(墨蹟)買取
- 幽霊画・妖怪画
- 特殊な需要がある画題で、状態が良ければ評価されます。→幽霊画・妖怪画掛軸買取
- 天神様
- 菅原道真像。北陸を中心に男児の成長を願って飾る風習があります。→天神様掛軸買取
同じ作者でも画題によって評価が変わります。たとえば川合玉堂であれば鮎を描いたものに引き合いが集まりやすく、円山応挙であれば犬や写生画が好まれる、といった具合です。
用途による分類(茶掛・仏事・節句・年中行事)
掛軸は掛ける場面によっても分けられます。用途は表装の格と画題の組み合わせで決まります。
茶掛
茶席に掛ける軸です。一行書の禅語が中心で、簡素な文人表装が用いられます。大徳寺の僧が箱書をした作品は特に重んじられます。禅語の意味と季節については茶道の掛軸の言葉・禅語一覧をご覧ください。
仏事の掛け軸
法事や彼岸に掛ける仏画、曼荼羅、名号(南無阿弥陀仏などの文字)です。仏壇の中に掛ける御本尊・脇掛も含まれます。宗派ごとに組み合わせが決まっているため、仏壇の掛軸の扱いと処分で確認してください。
節句・年中行事
- 正月:松竹梅、日の出、鶴亀、蓬莱山
- 桃の節句:立雛、官女、桃花
- 端午の節句:鍾馗、武者絵、鯉の滝登り
- 七夕:星、牽牛織女
- 盆:仏画、達磨図、地蔵
- 天神講(北陸):天神様(菅原道真像)
年中行事用の掛軸は、飾らなくなって処分に困るという相談が多い分野でもあります。手放し方は掛軸の処分方法で比較しています。
形状と寸法による分類(横物・双幅・三幅対)
形と本数による分類です。査定の際は寸法をお伺いします。
形状
- 竪物(たてもの):縦長。最も一般的です。
- 横物(よこもの):横長。書の額字、横披、俳画などに見られます。数は少ないものの、それ自体が珍しいわけではありません。
- 双幅(そうふく):2本一組。左右対で掛けます。
- 三幅対(さんぷくつい):3本一組。中央を中幅、両脇を脇幅と呼びます。中央に仏画や山水、両脇に花鳥を配する組み合わせが典型です。
主な寸法の呼び名
| 呼び名 | 幅の目安 | 総丈の目安 |
|---|---|---|
| 尺五立(しゃくごたて) | 約54〜55cm | 約190cm |
| 尺三立(しゃくさんたて) | 約44〜45cm | 約180cm |
| 尺八立(しゃくはちたて) | 約64〜65cm | 約200cm |
| 半切(はんせつ) | 約35cm | 約190cm |
| 茶掛(細巾) | 約30cm前後 | 約170〜190cm |
寸法は同じ呼び名でも表具師や時代によって数センチの差があります。床の間に合わせて選ぶ場合の考え方は床の間の掛軸の選び方をご覧ください。
種類の見分け方のポイント
手元の掛軸がどの種類にあたるかを確かめる手順です。上から順に見ていけば、多くはここで分類できます。
- 風帯を見る:垂れていれば大和表装や文人表装、天地に縫い付けられていれば仏表装の可能性が高い。
- 裂の段数を数える:上から下へ、裂が切り替わる回数を数える。多いほど格が高い。
- 金襴の量を見る:金糸が多用されていれば真に近く、無地系が多ければ草に近い。
- 本紙の素材を確かめる:光にかざして格子状の織り目が見えれば絹本、見えなければ紙本。
- 画題を判断する:描かれているものから山水・花鳥・仏画などに分類する。
- 桐箱を確認する:箱書があれば読み取り、題名と作者名の手掛かりにする。
写真を撮っておくと後が早い
全体、落款部分、桐箱の表と蓋裏、傷みのある箇所。この4点を撮影しておくと、査定を依頼する際にそのまま使えます。撮り方はLINE写真査定で解説しています。
自分の掛け軸がどの種類か分からないときは?
画題・表装・軸先の3か所を撮影してお送りください。多くの場合はこの3点で種類の見当が付きます。
査定の現場では、種類が分からないまま持ち込まれる軸が大半を占めます。画題・表装の裂・軸先の3か所を見れば、多くは分類の見当が付きます。ただし表装だけが立派で本紙は印刷、という組み合わせもあり、その場合は値が付かないこともあります。
種類別の買取ページのご案内
種類が分かった場合は、それぞれのページで価格帯の目安と評価のポイントをご確認いただけます。分からない場合も、写真をお送りいただければこちらで分類します。
- 買取品目一覧(掛軸)15カテゴリの一覧から探す
- 茶掛・禅語掛軸一行書、大徳寺箱書
- 日本画掛軸近現代の軸装作品
- 水墨画掛軸墨絵、山水図、南画
- 仏画・曼荼羅掛軸涅槃図、仏教美術
- 木版画・複製掛軸印刷の掛軸の価値
掛軸以外の書画(額装、屏風、色紙、古文書など)は掛軸以外の書画買取(日本画・洋画・版画ほか)にまとめています。価格の目安は掛軸買取相場・価格表をご覧ください。
ほかの記事は掛軸コラム一覧から読めます。あわせて掛軸とは(基礎知識)、表装とは・表装の見方、品目別は掛軸の買取品目一覧をご覧ください。
よくあるご質問
掛け軸の種類にはどんな分け方がありますか
表装形式、画題、用途、形状・寸法の4つの切り口で分けられます。表装形式は真・行・草の3段階の格式、画題は山水・花鳥・美人・仏画・禅語の書など、用途は茶掛・仏事・節句・年中行事、形状は竪物・横物・双幅・三幅対という区分です。買取の場面で価格に最も影響するのは画題と作者ですが、表装の格と保存状態も評価に加わります。
真・行・草の表装はどこを見て見分けますか
上から下へ裂が切り替わる回数と、金襴の使用量を見ます。裂を三段から四段に重ね金襴を多用していれば真、天地・中廻し・一文字の三段構成なら行、一文字を省いたり同じ裂で通したりする簡素な作りなら草にあたります。家庭にある掛軸の多くは行(大和表装)です。ただし簡素であることは格の低さを意味せず、茶席ではむしろ草の表装が好まれます。
大和表装と仏表装、文人表装の違いは何ですか
風帯の付き方と裂の色調で見分けられます。仏表装は風帯が天地に縫い付けられた押風帯が多く、金襴を多用して朱や紺の強い色調になります。大和表装は風帯が垂れ、一文字に金襴、中廻しに緞子を配する三段構成です。文人表装は一文字を省き、無地紬や更紗など色数の少ない落ち着いた裂を使い、南画や書、茶掛に用いられます。
掛け軸に描かれる画題にはどんなものがありますか
山水、花鳥、美人、仏画、水墨画、書・墨蹟、幽霊画・妖怪画、天神様などに分かれます。画題は需要と価格に最も直結する分類で、同じ作者でも画題によって評価が変わります。たとえば川合玉堂であれば鮎を描いたものに引き合いが集まりやすく、円山応挙であれば犬や写生画が好まれます。画題別の価格帯は買取品目一覧(掛軸)から各ページでご確認いただけます。
双幅・三幅対とはどういう掛け軸ですか
双幅は2本一組、三幅対は3本一組で掛ける掛軸です。三幅対では中央を中幅、両脇を脇幅と呼び、中央に仏画や山水、両脇に花鳥を配する組み合わせが典型です。揃っているほうが評価は高くなりますが、一幅だけでも買取の対象になります。仏壇の御本尊と左右の脇掛も、三幅で一組という点では同じ考え方です。
横物の掛け軸は珍しいのですか
竪物に比べて数は少ないものの、横長であること自体が価値を高めるわけではありません。書の額字、横披、俳画に多く用いられる形式で、評価は作者、内容、状態によって決まります。床の間の幅に対して収まりを確認する必要があるため、掛ける場所が限られる点は留意してください。
尺五立・尺三立とは何センチくらいの掛け軸ですか
尺五立は幅約54〜55cm・総丈約190cm、尺三立は幅約44〜45cm・総丈約180cmが目安です。ほかに尺八立が幅約64〜65cm・総丈約200cm、半切が幅約35cm・総丈約190cm、茶掛の細巾が幅30cm前後・総丈170〜190cm程度です。同じ呼び名でも表具師や時代によって数センチの差があるため、床の間に合わせる場合は実寸でお確かめください。
節句や年中行事に使う掛け軸にはどんなものがありますか
正月は松竹梅や日の出、鶴亀、蓬莱山、桃の節句は立雛や官女、端午の節句は鍾馗や武者絵、鯉の滝登り、七夕は星や牽牛織女、盆は仏画や達磨図、地蔵が用いられます。北陸では天神講に天神様(菅原道真像)を飾る風習があります。行事用の掛軸は飾らなくなって処分に困るという相談が多い分野で、手放し方は掛軸の処分方法で比較しています。
手元の掛け軸がどの種類か分からないときはどう調べればよいですか
風帯、裂の段数、金襴の量、本紙の素材、画題、桐箱の箱書の順に見ていくと、多くはここで分類できます。風帯が垂れていれば大和表装や文人表装、天地に縫い付けられていれば仏表装の可能性が高く、光にかざして格子状の織り目が見えれば絹本です。判断がつかない場合は、画題・表装の裂・軸先の3か所を撮影してお送りいただければ、こちらで分類します。